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そうして月日は流れた。
ミイと入れ替わりにして新しいネコたちがやってきた。僕が実家を出るまでの十余年の間にたくさんのネコたちと暮らしたけれど、どこか虚しかった。僕にとってミイはやっぱり特別だった。どうして?と聞かれると上手く言葉にならない。感覚的なものだから。波長が合うと言うのだろうか。ミイが側にいるとそれだけで落ち着いたし、何も怖いものがなくなった。言うなれば、心の拠り所のような存在だったのだ。
「ミイちゃん」
「なぁお」
僕のつぶやきに、律儀な猫又はかつてのミイのように返事をした。
「おたまちゃん、ありがとう」
「なんの。これしきのこと。アンタとあたしの仲だもの」
ふふっ。
嬉しくなって、思わず笑みが漏れた。
「何を笑ってるんだい」
そう言うおたまもどこか嬉しそうに見える。
「まさかミイちゃんに会えるとは思わなかった。会いたくてどれほど泣いたか。知らないだろう?」
「あたしだって辛かったさ。きっとアンタは悲しがって泣いてくれると思ってたからね」
「泣いただけじゃない。虚しかったんだ。心にぽっかり穴が空いたみたいになって。それって、僕はミイちゃんに依存してたんだね」
「依存ねぇ。心の拠り所と言ってほしいところだけど」
うん、そうだ。拠り所だ。心の安寧を求める場所、安心できる場所。僕にとってミイはそういう存在だったのだ。
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