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「言ったろ?あたしはアンタが大好きだった。いや、今でも気持ちは変わらない。アンタはいつまでもあたしのかわいいコタちゃんだよ」
コタちゃん。
おたまは、かつてのミイは、僕のことをコタちゃんと呼んでいたのか…
「コタちゃんて、完全に子ども扱い」
「そりゃね。一緒に暮らしていたときのあんたは幼い子どもだったもの」
ふふっ
と、ふたり(いや、ひとりと一匹?)同時に吹き出す。
その様子を横で見ていたハレが、ふふふと笑う。
「ヤマネコさまも、かかさまも、随分と嬉しそうでございますね。鬼のかかさまもこんなやさしい御顔をさせるとは…」
そこまで言ってハレはハッとした。おたまの形相が変わっていたからだ。
「誰が鬼だって?」
「あ、いえ、かかさまのお聞き間違いかと」
「あたしゃ耳はしっかりしてるんだ。なにせネコだからね。お前もネコなら分かるだろ!」
母子というのはどこの世界もこうなのだろうか。母は強し、である。けれども「鬼母の8割はやさしさでできている」とは、僕の母の受け売りだが、案外とそうなのかも知れない。
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