ネコの…

17/22
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「言ったろ?あたしはアンタが大好きだった。いや、今でも気持ちは変わらない。アンタはいつまでもあたしのかわいいコタちゃんだよ」 コタちゃん。 おたまは、かつてのミイは、僕のことをコタちゃんと呼んでいたのか… 「コタちゃんて、完全に子ども扱い」 「そりゃね。一緒に暮らしていたときのあんたは幼い子どもだったもの」 ふふっ と、ふたり(いや、ひとりと一匹?)同時に吹き出す。 その様子を横で見ていたハレが、ふふふと笑う。 「ヤマネコさまも、かかさまも、随分と嬉しそうでございますね。鬼のかかさまもこんなやさしい御顔をさせるとは…」 そこまで言ってハレはハッとした。おたまの形相が変わっていたからだ。 「誰が鬼だって?」 「あ、いえ、かかさまのお聞き間違いかと」 「あたしゃ耳はしっかりしてるんだ。なにせネコだからね。お前もネコなら分かるだろ!」 母子というのはどこの世界もこうなのだろうか。母は強し、である。けれども「鬼母の8割はやさしさでできている」とは、僕の母の受け売りだが、案外とそうなのかも知れない。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!