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「ちょいと、そこの若いの!」
背後で誰かが誰かに声を掛けているのが聞こえる。
「ちょいとお待ちよ!アンタだよ、アンタ!そこの若いの!」
声を掛けられた相手は自分だと気づいていないようだ。そりゃ「若いの!」じゃ分からない。自分では若いと思っていても傍目には若くないこともある。
しかし、「若いの」と言うならば僕は関係ない。三十路も半ばになれば、もう若いとは思えなくなってくる。なんて言うと、まだまだ若いと思っている元気な四十路や五十路に失礼だろうか。今時アラ還だって若いと言われるかも知れない。
それはさておき。
誰かが誰かを呼ぶ声はまだ続いている。
「もう!耳が聞こえないのかい!そこのアンタだよ!」
パシッ
いきなり後ろ頭を叩かれた。
驚いて振り返ると、そこには誰もいない。
しかし頭に受けた衝撃は確かなもので、かすかな痛みが残っている。
「さっきから呼んでるのに、アンタ、耳が悪いのかい?」
足元から聞こえる声に驚いて下を見ると、そこにいたのは一匹の三毛猫だった。
あぁ、僕は幻を見るほどに疲れているのか。
物言うネコの幻を見るなんて。
確かに疲れている自覚はあった。最近物忘れも激しい。手元が狂うことも
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