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に決まってるだろうよ」
そう言うと、三毛猫はふんっと鼻からため息のような鼻息を漏らす。
「アンタ、猫又を見るのは初めてかい?」
「猫又って、そんな、作り話、」
「見たことないからって作り話とは限らないだろう?今こうしてあたしはアンタの目の前にいる」
「変な夢見てるな…」
思わずそうひとりごちると、再び頭に衝撃が走る。
「なっ…!」
呆気にとられる僕を尻目に、三毛猫は「付いてきな」と踵を返した。僕が動けずにいると、「早くしな!結界が解けちまう」と、凄みのある目で睨みを利かせて僕に付いてくるよう促した。
妙だと思った。人通りの多い商店街でネコが喋っているのに誰も気づかないなんて。
辺りを見回すと、いつの間にか人っ子ひとりいない。いつもと変わらない見慣れた景色のはずなのに、人がいないだけでこんなにも違って見えるなんて。
いや、その前にこの時間帯に人がひとりも見当たらないなんてこと、あり得ない。僕は本当に奇妙な空間に足を踏み入れてしまったのかも知れない。
「何してるんだい!早く付いてきなって!」
再び三毛猫に促され、ハッとする。
「とにかく、ゆっくり話せるところへ行こうじゃないか。あたしのことを納得するのはそれからでいい」
そう言って、三毛猫は再び踵を返した。僕はその後にトボトボと付いていった。
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