本編

6/13
前へ
/13ページ
次へ
「…………」  無言で、優美をじっと見つめた。目じりが濡れているのがわかる。ああ、あたし泣いているんだ。 「泣かないで、さっちゃん、今日はお休みしよう」  あたしは、首を横に振る。  いやだ。こんなバカげた理由で休みたくない。同情なんかしないで言い、見捨ててほしい。そう思うのに、優美の肩に置いた手を、離すことができない。力なんか入ってもいないのに、優美はそれを振りほどこうとしない。 「大丈夫だよ、さっちゃん。私がそばにいるから」 「……やっ」  やっとの思いで出た拒絶の言葉。 「……い、や」 「さっちゃん」  それは、何に対しての拒絶なのだろう。自分でもわからないまま、あたしは意識を失った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加