あの日、君と見た桜を

番外編３－３ ありがとう

「もしね、優が本当に毅を睨んでいたのなら。あぁもしも、よ。毅は本当に面白くなかったんだと思うの。あの人、コンプレックスの塊のような人だから。自分が見た目で勝てない男と何やら楽しそうに話してる妻。そう見えたんじゃないかな。それで優に睨まれたから、尚更腹を立てたんだと思う」
「んん、そうか。良く分かんねぇけど」
「まぁ、多分ね。ただ二言三言話しただけなのに、凄く怒ってたから。きっとその時は、まだ浮気してなかったんだろうなぁ」

伏し目がちにそう言う彼女は、一つずつ昔のことを思い出しているようだった。

あの時優が睨んだりしなければ、あの男は浮気をしなかっただろうか。
そうすれば旭が傷付くこともなかった。
あぁ、でも。
それでは自分の気持ちが報われない。