1 刺激

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「そう、かぁ」 「どうした?」 「いや。俺、姉ちゃんいるわ」 「あぁ、だろうね。まぁでも。それは、結婚するならって話だから。気にしなくても」 つい言ってしまった、と思った旭は、目線を食事に落としたまま、顔が上げられない。 だって、顔を上げればきっと、不機嫌な花村がそこにいる。 「お前さ、分かってるから顔上げないんだよな。この間も言ったけど、今こうして一緒にいるんだから、お前だけの未来じゃねぇ」 「あぁ、うん。ごめん。つい」 こうやって先週も喧嘩をした。 付き合い始めた一ヶ月で、二人は何度揉めたろうか。 大体の理由は同じ話である。 将来など絶望でしかない旭と、そうでない彼。 いつまでも離婚の痛手を引き摺るつもりはないが、世の中はそんなに上手くはいかない。
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