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「そう、かぁ」
「どうした?」
「いや。俺、姉ちゃんいるわ」
「あぁ、だろうね。まぁでも。それは、結婚するならって話だから。気にしなくても」
つい言ってしまった、と思った旭は、目線を食事に落としたまま、顔が上げられない。
だって、顔を上げればきっと、不機嫌な花村がそこにいる。
「お前さ、分かってるから顔上げないんだよな。この間も言ったけど、今こうして一緒にいるんだから、お前だけの未来じゃねぇ」
「あぁ、うん。ごめん。つい」
こうやって先週も喧嘩をした。
付き合い始めた一ヶ月で、二人は何度揉めたろうか。
大体の理由は同じ話である。
将来など絶望でしかない旭と、そうでない彼。
いつまでも離婚の痛手を引き摺るつもりはないが、世の中はそんなに上手くはいかない。
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