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「ねぇ、そう言えばさ。花村の実家って、どこ?」
何か楽しい話をしよう。
そう思った旭だったが、飛び出たのはこんな話題。
これは楽しい話ではないな、と聞いてから思っている。
「ん?あぁ、言ったことなかったっけ。神奈川だよ」
「あ、そうなんだ。関東の子だとは思ってたけど、聞いたことなかったよね」
「何年も知っててもさ、意外と知らないことあったよなぁ。小山内はどこだっけ」
「私は、千葉。ここから三十分くらいで帰れるよ」
実家へは、ここから乗り換えもなく帰れる。
そのくらいだから、離婚したときには「戻って来てもいいんだぞ」と父は言ってくれた。
けれども旭がそうしなかったのは、あそこには苦しい思い出ばかりが詰まっているから。
それと、娘も離婚をした、と言われるのが嫌だったからだった。
自分が言われるのなら構わないが、父までも巻き込みたくない。
だから出来るだけ近く、不便のない場所を選んだのだ。
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