前編『希望の遭遇』

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 二匹は新婚さんなのだ。ラブラブだから、イチャイチャしたいはずだ。時々こっそり、二匹が尻尾を絡めているのを希望は知っている。だからこうして、二匹っきりの甘い時間をプレゼントしているのだ。飼い主もきっと喜んでくれることだろう。時々写真を撮っては「男前×美人……いや、美人×男前……? りば?」と呟いている。何を言っているかよくわからないが、飼い主の目は光輝いていたから、きっと素敵なことなのだろう。  希望も素敵だな、楽しみだなと思っている。二匹が結ばれたら、どんな仔猫が来るのだろう、と。  愛する猫二匹が結ばれると、いつの間にか二匹によく似た小さな猫が増えているのだ。希望は賢いのでその事を知っていた。希美に言ったら、うん、ああ、えっと、そうだね、と言っていたので、希美も楽しみなんだろう。神様に遣わされた天使が、そっと置いていくに違いない、と希望は信じている。    今日はいいお天気だったから希望はお外に出てみた。お外と言っても、小鳥遊家のお庭の中だ。希望にとって、庭は十分広くて、ここだけが遊べる『お外』だ。塀の向こう側はよくわからない。興味はあるけど、怖くて出たことはなかった。  お庭にはお花も草もいっぱいある。希望はそこをふらふらお散歩するのが好きだった。それと、こっそり隠してあるボールを追いかけて、走り回れるのが楽しい。おうちの中でやると、夢中になりすぎていろんなものを倒したり壊したりしてしまって、希望は飼い主に怒られてしまう。お外は広いから大丈夫。  希望はしばらくの間、お花を眺めたり、虫をペシペシしたり、ボールを転がして遊んだりしていた。       
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