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「もう、会わないかな……」
アサヒは、この街にいる。
近隣高校の制服を着ていたので、それは間違いない。たぶん、アサヒの不良グループはそこらをたまり場にしているので、行けば会えるのだろう。
ぼそりと呟いた或斗が、不安に思いつめたように見えたのか、菜摘がそっと或斗の手をとって、ぎゅっと両手を包み込む。
「大丈夫、僕が一緒にいるから。或斗のこと、絶対に守るよ」
「あ、うん……ありがとう」
菜摘の言葉に、或斗は心強く思いながらも、違和感を覚えた。
そうしてだろう、あの男に会ってしまうことに恐怖を感じるのに……どこかで会えないだろうかと、無意識に赤髪を探してしまう。
――もう一度、会いたい。
そんな風に考えてしまうのは、つまり、心のどこかで会うことを望んでいる証拠である。
Subの本能が、無意識にDomを求めていたのだった。
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