バッドトリップ

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「あなたがアサヒさんですか? もう、僕の弟に関わるのはやめてください」 「へぇ、名前覚えてくれたと? 嬉しかねぇ」  菜摘が、余裕の笑みをかましてくるアサヒを鋭く睨んでいる。  睨まれたアサヒはやっぱり楽しそうで……「強気やねぇ」と呟き、細い目をスッ……と開き双子を見下ろした。  その眼は、大蛇が獲物を見つけた時の、ソレを見定めるような視線で……眼から放たれるその恐ろしい力に、或斗の全身がぶるっと震えて、足がすくんでいく。  ぐらぐらと、抜け出せない沼のような恐怖にのまれて、或斗の全身の力が抜けた。ガクッと膝から崩れ落ちて、それでもアサヒから目を逸らすことはできなかった。  だんだんと青ざめて、地面に崩れ落ちた或斗の肩を、菜摘が強く揺さぶる。 「或斗! しっかりして!!」  しかし、或斗にはもう、菜摘の声が聞こえていなくて……ひゅっひゅっ、と呼吸が変に乱れて、視界がぐるぐると歪んでいった。
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