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幸い、公園の端に居たため、公衆の視線はそんなに感じなかった。
仮に見られていたとしても、きっと、そんなに珍しいことではない。
町に行けば、四つん這いでDomについて歩くSubや、カフェテリアでもDomの足元にオスワリをしているSubが居る。
大人になったらフツーのこと、そう教わってきたし、でも自分がノーマルならば関係のないことだと思ってた。
「ゆっくり息を吐くんよ。そう、上手やね、いい子いい子」
とん、とん、とん、と背を叩かれながら、段々と或斗の様子が落ち着いていくのが見てとれる。
真っ青だった顔も少しずつ戻り、頭を抱えていた手は、いつの間にかアサヒに巻き付いていた。
実際に、或斗がSubだと聞いて(まだ自己申告の段階だが)、正直戸惑い、疑った。
両親は、父がDomで母はNormalである。
ダイナミクスは遺伝ではない、そう先生が言っていたが、まさか弟がSubだったなんて。
だけど、今、アサヒの腕の中で表情を変えていく或斗を見て……これがSubなのだと痛感させられた。頭を撫でられ「いい子いい子」と褒められて、とろん、と瞳を潤ませる。
そうして、バッドトリップから抜け出した或斗が、一番最初に声に出したのは、
「アサヒ、さん……もっと、して……」
本能が、Domを求める言葉だった。
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