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「そーいや、名前教えとらんかったね。朝比 美津也って言うったい、よろしゅうね、或斗くん、菜摘くん」
公園のベンチに或斗を座らせて休ませていると、朝比が缶ジュースを買ってきてくれた。
菜摘はそれをへの字口で受け取って、或斗に開けてあげた。
ひとくち、ふたくち、ゆっくりジュースを飲んで、それから腫れぼったい目を朝比に向けた。
バッドトリップ……
これは、Subが強い不安の中で虚無感に包まれたり、パニックになってしまう、発作のようなもの。
Domに威圧され従う本能を利用されてしまったり、欲求を満たしたDomがそのままSubを放置すると、コントロールを失ってしまい、バッドトリップになってしまうそうだ。
「ほんとうに、もう、怖いことしない……?」
「せんよ。或斗くんと仲良ぅしたかばい。菜摘くんも」
「ね?」と、やさしく微笑みながら、朝比は或斗の髪を撫でた。
大きな手からぬくもりを感じて、自然と或斗の心がほぐれていく。
だけど、それを許せないのは菜摘だった。
「今後、二度と僕たちに関わらないでください」
「なして?」
「なんでって……自分がしたこと、わかってないんですか?」
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