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共に時間を過ごしていくうちに、『朝比は優しい男だ』と或斗の中で朝比に対する印象が180度変わっていた。
初対面の時とは全く違う印象に戸惑いもあったが、今ではこの優しさにどっぷり浸かっている。
酷いことをされたのは初めて会った時だけで……いやむしろ、或斗に痛いことをしたのは周りにいたヤンキー達であり、朝比にはなにもされていないとすら思う。
公園でバッドトリップから抜け出せなくなった時は、或斗を助けてくれたし。こっそり会う日は、毎日、或斗を褒め甘やかしてくれる。
だから、或斗は朝比と会えるのがとても楽しみになっていた。
「イイ子や。Comeのコマンドはバッチリ覚えとぉね。GoodBoy,或斗」
「えへへ、美津也さんに褒められると嬉しい。ねえ、俺にもっとコマンドを教えてよ」
菜摘に隠れてこっそり会うようになって、朝比は或斗に基本のコマンドを教えてくれていた。
今日で3回目、互いに名前で呼び合うこともだいぶ慣れてきたと思う。
初めこそ、名前で呼ぶのも呼ばれるのも恥ずかしかったけれど、今では『美津也さん』という呼び方がしっくりくる気がするのだ。
「もちろん。じゃあ、或斗。今までオレが教えたコマンド、覚えとー?」
「覚えてる。えっとね……」
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