お仕置き

7/11
前へ
/166ページ
次へ
 或斗の身体が、再び沸騰したように熱くなった。  朝比の『GoodBoy,』というその一言が、或斗の全身に喜びとなって伝わっていく。  額に落とされた初めてのキスが、或斗の心をふわふわと多幸感に導いた。  先程までの怖い朝比とは一変、今まで通りの優しい朝比に再会し、緊張の糸が解けたのか、或斗の瞳から再び涙が溢れだす。  すき。  優しい美津也さんが、だいすきだ。 「……ぅ、ふううぅ、うぇぇ、美津也さぁあん……っ」 「分かっとぉよ。たくさん御褒美ばあげるけん、甘やかしちゃるから、ね?」  おしぼりで拭いたばかりなのに、再びボロボロな表情になったのが恥ずかしくて……  それを隠すように朝比の首に抱きつき、うなじの方へ顔を(うず)めた。 *  急いで帰路につくと、玄関の鍵はまだ閉まっていた。  ほっと一息ついて、ポケットから家の鍵を取り出し、鍵穴に差す。  菜摘は生徒会活動に参加しているので、金曜日だけ普段よりも帰宅が遅い。(両親は共働きで帰ってくるのは深夜に近い)  と言っても18時頃には帰宅してくるので、朝比と会える時間は2時間くらいだった。菜摘が帰ってくる前に帰宅しなければ、朝比と遊んでいたことがバレてしまう。  玄関に入って、照明をつけて、リビングに荷物を置く。  不自然がないように……いつもの通りに、過ごしたふりをしよう。ああ、そうか、うたた寝しちゃった事にでもしようか、と。  都合の良い言い訳を思いついた、その時だった。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1174人が本棚に入れています
本棚に追加