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或斗の身体が、再び沸騰したように熱くなった。
朝比の『GoodBoy,』というその一言が、或斗の全身に喜びとなって伝わっていく。
額に落とされた初めてのキスが、或斗の心をふわふわと多幸感に導いた。
先程までの怖い朝比とは一変、今まで通りの優しい朝比に再会し、緊張の糸が解けたのか、或斗の瞳から再び涙が溢れだす。
すき。
優しい美津也さんが、だいすきだ。
「……ぅ、ふううぅ、うぇぇ、美津也さぁあん……っ」
「分かっとぉよ。たくさん御褒美ばあげるけん、甘やかしちゃるから、ね?」
おしぼりで拭いたばかりなのに、再びボロボロな表情になったのが恥ずかしくて……
それを隠すように朝比の首に抱きつき、うなじの方へ顔を埋めた。
*
急いで帰路につくと、玄関の鍵はまだ閉まっていた。
ほっと一息ついて、ポケットから家の鍵を取り出し、鍵穴に差す。
菜摘は生徒会活動に参加しているので、金曜日だけ普段よりも帰宅が遅い。(両親は共働きで帰ってくるのは深夜に近い)
と言っても18時頃には帰宅してくるので、朝比と会える時間は2時間くらいだった。菜摘が帰ってくる前に帰宅しなければ、朝比と遊んでいたことがバレてしまう。
玄関に入って、照明をつけて、リビングに荷物を置く。
不自然がないように……いつもの通りに、過ごしたふりをしよう。ああ、そうか、うたた寝しちゃった事にでもしようか、と。
都合の良い言い訳を思いついた、その時だった。
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