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ドンッ
と、鈍い低音がキッチンから響いてきて、心臓が跳ねる。
慌てて後ろを振り返って、或斗の息が止まった。
カウンターキッチンの向こう側に。
ものすごい形相で、威圧をかけてくる菜摘が、そこに立っていたのだ。
「おかえりぃ、あーるーと」
声が出なくて、喉が一気に干からびたような感覚が或斗を襲う。
代わりに冷や汗がぶぁぁあっと噴き出して、奥歯がガチっと震えた。
その時の菜摘の表情は、今まで見たことがないくらい、恐ろしかった。
「な、なにやってんの……こんな真っ暗闇で……」
やっと掠れたような声が出て、或斗は菜摘に問う。もう、疑問ばかりで何から訊ねたらいいのか分からなくなっていた。
照明もつけずに夕方の薄暗い家の中にいるなんて……これが菜摘でなければ殺されていたかもしれない、と恐怖に戦慄した。
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