くらっしゅ ちぇりー

お仕置き

「何時頃帰ってくるのかなーって、楽しみにしてたよ」

　ギシ、と床が軋む音をたて、菜摘が一歩ずつ或斗に近づいてきた。
　その手にはピンク色の封筒がぐしゃりと握りしめられており、菜摘は開封済みのそこから、２枚の紙を取り出した。
　それをこちらに見えるようにひらりと提示して、或斗は恐る恐るそれを受け取った。

「或斗は朝比(あいつ)の言う通り、やっぱりＳｕｂだったね。朝比ほどのＤｏｍを前にして、理性が保てないのは、仕方のない事だと思う。でもね、もう必要なくなるよ」

　その紙には、或斗の名前の横に『Ｓｕｂ』と書かれていて……
　もう１枚の紙には、菜摘の名前の横に『Ｄｏｍ』と書かれていた。

「僕が、或斗のパートナーになってあげる。だから、もう朝比(あいつ)のところへ行かないで。お兄ちゃんの言う事、きけるよね？」

　どくん、と心臓が強く打った。
　まだ、Ｄｏｍとして自覚症状の出ていない菜摘からは、グレアも、コマンドの強制力も感じられない。しかし『お兄ちゃんの言う事を聞きなさい』と育てられた或斗は、そのセリフに頷きそうになった。