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或斗は、菜摘の肩を支えて、互いの視線が交合うように向き合った。
菜摘のが少しだけ身長が高く、或斗は斜め上をすこし見上げる。
「コマンドを教えてくれたって……もうプレイをしたの?」
「プレイ?」
「コマンドをつかったやりとりのこと。……授業でやったじゃん」
呆れたようにそういわれて、或斗は「あはは……」と空笑いを返した。
「コマンドも教科書に書いてあるし」と菜摘に言われて、そういえば前にそんな授業を受けたような気がしたが、ロクに授業を聞いていないが故、記憶に残っていないのだった。
それから、もうプレイを行ったことを伝えると……菜摘は不満そうな顔をして身体を離した。
「ソファーに座って、少し話をしようか。……で、朝比とは何回くらい会ったの?」
「今日で3回目……」
「3回目?! それでもうプレイを? 常識的に考えて、それは早すぎるよ」
菜摘の話によると、DomとSubがプレイに至るまでには、本来ならばもう少し時間を要するらしい。
行為の順番は、男女が恋人になるのと同じだと言う。
初めのうちはデートしたり、手を繋いだりして、相手がどんな人なのかを知って。
それから、優しいプレイをしていき……徐々にお仕置ができるようになる。
ダイナミクス同士のプレイは、つまるところ性行為そのものに等しいというわけで。
全部、信頼の上になりたつ行為であり、相手を完全に信頼できないと、或斗のようにバッドトリップになってしまうようだ。
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