ダイナミクスとグレア

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「抵抗すんな! 大人しくしてろ!」 「っ……あッ、うぐっ」  ドコッ、と男の靴が或斗の腹にめり込んだ。痛みに顔を歪めながら体を芋虫のように丸め、小さくなる。  男達の嗤う声が耳に障って、潤んだ瞳をキッときかせると、視界の先でアサヒがクスっと笑みをこぼした。その綺麗な笑い方に思わず見惚れそうになって、でもすぐに男達の蹴りによて現実に引き戻される。  或斗はどうしようもできなくて、でも、こんな男達に負けてたまるかと意地を心に唱え続けた。 * 「あーるーとーくんっ」  そのまましばらく男達からの暴行が続いて、ボロ雑巾のように薄汚れ傷だらけになった或斗の前に、アサヒがしゃがみこんだ。  乱れた髪の毛をぐしゃりと掴んで、顔を上に持ち上げられる。  切れた口元や鼻からトマトジュースのような赤が垂れて、涙などの体液と共に床にポタポタと落ちた。 「うっわ、きったなかねー。とりあえず、或斗くんはDomじゃなかばい」 「……な、ん、」 「だって、めちゃくちゃオレの事睨んできたとにグレア放たれなかったけん。こげん殴られたり蹴られたりしたら、本能的にグレアくらい出すやろ」
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