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……Glare.
それはDom特有の殺気のような、圧力のオーラのようなもの。
グレアはDomが睨むことによって放たれるのだが、或斗がアサヒを睨んだ際にそのチカラは感じられなかった。
つまり『Domではない』という結論に達するというのがアサヒの見解らしい。
「残るはSubかNormalか。ま、この世界の半分はNormalらしーけん。或斗くんはどうやろね?」
髪の毛を掴んでいた手が離された。
上半身は再び、床にドサッと転がって「うっ……」と声が漏れる。
アサヒが他のメンバーに顎でなにやら合図を出すと、或斗を拘束していた縄が外された。
もう、抵抗する気力も、動く力も残っていなかった或斗は、自分の真上から垂れる真っ直ぐな赤髪をぼんやりと見つめていた。
アサヒの顔をぼうっと見て、その綺麗な輪郭や、細い薄茶色の瞳に、魅入った。無性に惹きつけられるその顔に、好感をも持ってしまう程だった。
「或斗くん」
そんな綺麗な顔が、スーッとした細い唇が、或斗の名前を呼ぶ。
ただ、それだけなのに。
心臓の奥がグツグツとしてきて、今まで感じたことのないゾワゾワとした感情が或斗を襲った。全身が小刻みに震え始めて、それは、恐怖からくる震えだと思った。
だけど、その考えは一瞬で否定された。
「Kneel」
アサヒの二言目。
その低音に、或斗は心臓を突かれるような、胸が苦しくなるような感覚に襲われ……訳の分からないうちに上半身を起こし、アサヒの前に『おすわり』をしてみせたのだった。
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