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……そう、思ったのに。
アサヒの視線が、或斗に向けられ、互いの視線が交わった。そこから発せられたグレアは、或斗を捕らえ、ゾクゾクと従属欲を掻き立てる。
グレアに充てられたSubは、そのDomから逃げる事ができなくなる。
確か授業で、先生がそんなことを言っていたっけ。
「或斗くん……オレが学校行ってる間に、逃げんなや」
逃げるな、という事は、まだ解放されないということ。
そんな命令に血の気が引くのを感じて、だけどアサヒの微笑みは依然と楽しそうなままだった。
「Stay、しきるよね?」
Subを自覚して初めての「待て」に、或斗は意に反して、ひとつ頷く。
これがSubの本能なのだと、まさか実感する日が来るとは思っておらず、或斗はこれからどうなってしまうのだろうと大きな不安を抱いた。
だけど、そのあと。
お昼を過ぎて、夕方になって、空が藍色になっても。
アサヒという男は、或斗の元に戻ってこなかったのだった。
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