バッドトリップ

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バッドトリップ

 今まで自分がSubだなんて思ってもいなかったから、ダイナミクスなんて関係ないと思ってた。  だから学校で配られたダイナミクスの教科書も見てないし、授業もロクに聞いておらず、自分の無知を恥じる。  Subの本能を利用されてしまった時どうしたらいいのか分からず、或斗はただ助けを求めるほか何もできなかったのだ。  アサヒの視線だけで、心臓の奥がズキズキグツグツとして、なんともいえない気持ちに襲われる。初めてのグレアは、未熟な或斗の本能を呼び覚ました。  理不尽な命令だって逆らうことができず、それどころか命令された時の快感は、或斗の心に強く刻まれて忘れることができない。  あの命令のチカラは、一体何なのだろう。 「それは【コマンド】……DomがSubに送る命令のことだよ」  呆れたように「授業でやったでしょ」と、或斗の隣にいた少年がため息をついた。  Subはコマンドに逆らえない。それどころかコマンドを送られることが悦びになるらしく、これは本能によるものだという。  そう或斗に教えてくれたのは、三鳥菜摘(みとりなつみ)……或斗の双子の兄である。
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