一話「魔女が棲む館」

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所謂魔女の棲む館と言う曰く付きの噂が付き纏う、ある森外れにある古い洋館が建っているという。其処に魔女が住んでいて、訪れた者の願いを何でも叶えてくれると言うらしい。全く馬鹿馬鹿しい話だ。ケイは「と言う訳でイッチー、焼きそばパン奢るからその噂確かめて来て!」と自分を身代わりにして、噂を確かめて来いと言わんばかりに自分をパシリに使ったのだ。あの野郎…自分が怖がりだから生贄にしたな?後私は焼きそばパンよりアンパン派だっつーの。とぐちぐち言いながら、その目的の森外れの洋館に辿り着く。一香は、洋館の玄関に近付き、玄関の様子を確かめる。金属が錆びたドアノブ、かなり年月が経っている樹木の洋式の開閉ドア、じめじめと水溜りが溜まったような感覚がある石畳の床…本当に魔女が棲んでいるの?これはオカルトで言う「お化けが住んでいる」場所の間違いじゃない?と考え込む。これで自分の身に何かあったらケイを恨むからな!と怒り ながらドアノブを一気に握り、ドアを開いた。ドアを開くと、エントランスが広がった。 (誰かが住んでいる、のかしら…?) エントランスホールは質素な様子が伺われた。エントランスの中心は洋式のテーブルと、二対のソファ。その奥には暖炉があり、その対となる場所には、二階に通じていると思わしき二対の階段が、螺旋状に置かれていた。 一香は「すいませーん、誰か居ませんかー」と呼びかけるが、答えてくれる者が居ない。まあ、ケイはたまにホラ吹きな事も呟くから(この前、幸福をおびき寄せる招き猫と称しながら、ぼったくりな詐欺に遭っていた事もあった)、どうせ今回も同じだろう――と、踵を返して帰ろうとした瞬間。 「君はお客様かな?」     
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