一話「魔女が棲む館」

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トーンが低い、女性の声がした。な、何!?ゆゆゆゆゆゆゆ幽霊!?と後ろを振り返ると、暗くて見えなかったが――どうやら二階に通じている階段の先はバルコニーだったらしい。そのバルコニーに銀色…いや、白いウェーブの髪をした少女が居た。黒いカチューシャに、赤い髪飾り――ヘアピンをしている青い、アメジストの瞳をしている美しい少女。まるでお人形の様だ。と一香は感じられた。中世時代を思わせるエプロンドレスを身に纏い、ゆっくりと階段を下りて来た。 「ふむ、どうやらその身振りだと――君のご友人から、相当な無茶振りをされてこの屋敷に来たみたいだね」 「…何で、そんな事まで分かるの!?もしかして私の心を詠んだ!?超能力者か何か!?」 「いや、違うよ…単刀直入に言おう。君が好奇心納税なら、何も言わず突入する筈が無い。無様に突入して私に会わない筈だ。それと、『客人』なら私の屋敷を物色しない…それと、君の声音だ」 「は…!?声音!?」 すると少女は優雅に微笑み――こう告げた。 「まるで、『死にたくない』と言わんばかりの声音だったね」 君の様子は拝見させてもらったよ。まあ、愉快愉快だったね。と人を馬鹿にしない――それとは別に、愉しそうな表情をしていた。本当に何なのこいつ。人の心がない悪魔?と一香は困惑をしていたが、少女は「あ、そうそう。自己紹介がまだだったね」と階段を降りながら口を開く。 「私の名前はゼブ――正真正銘の『悪魔』と言った方が、正しいかな?」 は?あく、ま――一香は、絶対にありえないでしょそれは。と言わんばかりの表情をしながら、目の前にいる少女の姿をした『悪魔』の微笑みに引き攣った。
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