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琥珀色の少女
カップに淹れた花弁が浮いたタイミングで、娘は湯を残して花弁だけを網で掬う。
そうして、ピンクに色付いた湯を口に含むとそっと微笑んだのだった。
「うん、今日も上手く淹れられた」
ひとりで暮らし始めたばかりの頃は、お茶を満足に淹れる事さえ出来なかった。
近くの村で簡単な手仕事をしながら、村の女性達から教えてもらって、ようやくひとりで淹れられるようになったのだった。
お茶だけではなかった。料理も、洗濯も、掃除も、畑仕事でさえ、娘が知るものではなかった。
やはり、住むところが違えば、生活の勝手も違うのだと、娘は考えせざるをえなかったのだった。
娘は窓辺に近寄ると、いつもの様に揺り椅子に腰掛ける。
近くのミニテーブルにカップを置いて、読みかけの本を手に取った時だった。
コンコンっと、控え目に入り口のドアをノックの音が聞こえた。
こんな村外れの森の中に住んでいる娘を訪ねて来る者は、かなり限られていた。
手仕事をしている村の関係者だろうと、娘は早合点をして、ドアを開けたのだった。
ドアを開けた時、そこには誰も居なかった。
娘が首を傾げると、今度は下からグ〜っと、音が聞こえきた。
娘が下に視線を向けた。
すると、そこに居たのは。
薄汚れた格好をして、輝くような琥珀色の瞳で娘をじっと見つめてくる、痩せっぽちの五歳くらいの少女が立っていたのだった。
娘が見つめている中、また少女のお腹からグ〜っと音が聞こえてきたのだった。
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