33人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「何を言っているんだ!? 私はドラゴンで……!」
「貴方は私達の事を食べないと言いました。だから、私達は家族になれると思って」
「それは、だが……」
離れようとするドラゴンを強く強く抱きしめて、娘は優しく続けた。
「私は家族になるのに、種族なんて関係ないと思います。貴方には人間の心がある。それで充分」
娘はドラゴンの顎の辺りを愛撫する。何度も撫でる内に、ドラゴンは気持ち良さそうに目を細めた。
「それに、姿形はまやかしだって、聞いたことがあります。大事なのは気持ちだって。心だって……!」
「それは……」
激情になるドラゴンに負けないように、娘は声を振り絞った。
「だからこそ、私は敢えて聞きます。貴方は……」
娘はドラゴンから離れると、その水色の光をじっと見つめた。
「貴方は、人ですか? それとも、ドラゴンですか?」
「わ、私は……」
ドラゴンはしばらく、口籠もったが、覚悟を決めて言い放った。
「私は、人だ……私は人間だ!」
そうして、ドラゴンから真っ白な霧が溢れてきた。
娘は腕の中の少女を庇いながら、その場に伏せたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!