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「そうですね。じゃあ……」
娘は改めて、青年を見た。
雪の様に白く腰まである長い髪、顔の左側を始めとして身体のところどころを覆う白銀色の鱗、そうして、澄んだ水色の瞳。
身長は娘より頭一つ高く、騎士だっただけあって、ある程度、引き締まった身体つきをしている。
悩んでいる娘を見つめ返す青年の水色の瞳には、どこか透明感があった。
日が沈み、月明かりに照らされるその姿と瞳を見ていると、どこか水晶を思い出させられた。
「じゃあ、これも安直かもしれませんが。水晶ーークリスタルからとって、クリスタスなんてどうですか? 愛称はクリスとか」
娘が恐る恐る青年を見ると、青年は顔を綻ばせた。
「ああ。貴方につけてもらった名前なら、どんな名前でも素敵な名前だ。その、水晶やクリスタルはよくわからないが」
青年ーークリスは嬉しそうに返した。その姿に、娘は悶絶したのだった。
「うわあ。イケメン!」
「い、いけめん……?」
クリスの言葉に、娘は慌てて説明をした。
「あっ! え〜っと、かっこいいって意味です!」
そうして、娘はクリスに水晶がどういうものか説明をした。
クリスによると、名前は違うが水晶も、琥珀も、この世界にあるらしい。
「ところで、先程から気になっていたのだが」
「はい?」
娘は居住まいを正すと、コハクをしっかり抱きしめながら、何やら考え込んでいるクリスを見つめた。
「先程から、貴方はしきりに『この世界では』と繰り返していた。ということは、貴方はこの世界の人間では無いのだな」
「……はい。そうです」
娘はクリスを見つめると、悲しそうに笑う。
「私は異なる世界から召喚されて、この世界にやって来ました」
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