水晶のようなドラゴン

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ドラゴンは身体が全体的に白銀色の鱗に覆われており、大きくギザギザの両耳が特徴的であった。 「綺麗……」 娘は思わず、口に出してしまう。こんなに綺麗な生き物、又はモノはこれまで見た事が無かった。 こんなに綺麗な生き物が、この世界に居たなんて。 娘は見惚れていると、ドラゴンは不思議そうに首を傾げた。 「綺麗なのか? 私は?」 「え……。ええ、はい。とても」 「そうか。綺麗と言われたのは、そこの少女以来だ。案外、嬉しいものだな」 ドラゴンは首で娘が抱えている少女を示した。少女は嬉しそうに笑っていたのだった。 「と、ところで。ドラゴンが人間と話せるなんて、知りませんでした」 娘は言った事が恥ずかしくなって、話題を変えた。ドラゴンは困ったような顔をしたのだった。 「それは、まあ……。私が、元々は、人間だった事が関係しているんじゃないか?」 「えっ……! 人間だったんですか!?」 「ああ。そうだな」 ドラゴンは元の場所に戻ると、お腹の辺りを開けて座ったのだった。そこに寄りかかって、座れと言われたような気がした娘も、ドラゴンに寄りかかって座ったのだった。 娘はそっとドラゴンに寄りかかる。ドラゴンは娘が思ったよりも温かかった。 娘は安心して、ドラゴンに身を任せたのだった。 「少し……昔話をしてもいいだろうか?」 「昔話?」 「ああ。私が人間だった頃の話だ」 そうして、ドラゴンは悲しそうに鼻を鳴らすと、語り始めたのだった。
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