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「この少女は、母魔女が目を離した隙に、成長薬を飲んだようだ。成長薬が存在する事は、本で読んで知っていたが、あれは植物や家畜に使う物だと聞いたが……。少女はたどたどしい歩き方で母魔女を見つけると、背中に抱きついたらしい」
ドラゴンは悲しげに目を細めた。
「……母と、言って」
「母……」
「ああ。しかし、母魔女は成長した少女と、量が減った成長薬を見て、少女が何をしたのか悟った。そうして、言い放ったのだ」
ドラゴンは目を閉じると、少女に擦り寄った。
「気持ち悪い、とな。そう言い放って、森に娘を捨てたのだ」
「そんな……。だって、この子は自分の娘でしょう?」
娘は手で口を覆う。娘には理解出来なかった。
ただの悪戯で、成長薬を飲んだだけなのに。それだけで自分の娘を捨てるものなのか。
「普通はありえない。だが、母魔女は理解出来なかったのだろう。子供の悪戯に、自分の思う通りにならない子供に」
「そういう、ものなのかなあ……」
「さあ。私は子供が居ないからわからないがなあ。そうして、森を彷徨っていた少女を私が拾った。何も知らない、わからない少女に、私が教育を施した。言葉、文字、礼儀、作法、わかるものは全て。少女は吸収が早かった。そうして、私は少女を託した。貴方に」
「私に……?」
今度は娘が首を傾げる番であった。
「貴方が人里を離れて森に暮らしている事は、この森に来た時から知っていた。いや、貴方がこの森にやってきて、暮らし始めたところから見ていた。だから、貴方になら娘を託せると思ったのだ」
「どうして? 私も子供が居ないから、どう育てたらいいかわからないわ。それなのに、どうして私が……?」
ドラゴンはまた悲しそうに、自分の身体を見下ろした。
「……私が、人間じゃないからだよ」
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