琥珀色の少女の話

1/2
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ

琥珀色の少女の話

「そうして、この森に来る直前に、私はこの少女を拾ったのだ」 ドラゴンは娘に抱かれて、眠そうにしている少女を愛おしそうに見つめた。 「拾った?」 「ああ、この森の前に住んでいた霧深い森でな。この少女は、今にも死にそうに森を彷徨っていた」 ドラゴンが顔を近づけると、少女はまた瞳を輝かせて、ドラゴンの顔に抱きついた。 「この少女は、魔女一族の娘らしい。魔女一族は知っているか?」 「ええ。まあ」 魔女一族とは、この世界で希少な一族であると聞いていた。 魔女一族にしか伝わらない薬や魔法があり、それを目当てに王族から貴族まで、多くの人々が各地から集まっていたらしい。 しかし、それも三百年くらいまでの話。 三百年程前、とある魔女が王族の願いを叶えられず、首を刎ねられた。 それをきっかけに、魔女一族は嘘吐きだ。悪魔だ。と言われて、迫害を受けたーー魔女狩りが起こった。 ある者は投獄され、ある者は処刑された。 そうして、魔女一族は減り、生き残った魔女一族も人から隠れるように暮らすようになった。 「魔女一族の特徴は、金色の髪とオレンジ色の瞳だ。魔女一族は長らく、一族内での婚姻と出産を繰り返した結果、その特徴を持つ者は魔女一族以外には居ないとされている」 娘はドラゴンに懐く少女を見つめた。 先程、娘が洗ったおかげで、少女の髪は金色に輝き、琥珀の様な瞳は爛々と光を受けて輝いていた。 「これは、この少女から読み取った記憶なのだが」 ドラゴンは少女の内にある魔力を通して、記憶を読み取ったらしい。 「この少女は、本来は一歳になるかならないかの少女らしいな。いや、赤子か……」 「一歳? でも、どう見ても、五歳くらいじゃ……」 娘は驚いて少女を見た。少女は不思議そうに、琥珀色の瞳で娘を見つめ返してきたのだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!