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二人でゆっくりと長刀を振り上げる。
次の瞬間、津上屋の大旦那の首と胴は綺麗に離れた。
雄蔵も雪も返り血で赤くまみれた姿のまま抱き合った。
「雄蔵に会えて良かった……」
その中、ももたろうは大旦那の首を拾う。
「さて、後始末といきますか。雪殿、泰宗殿は雪殿を正式に広臣殿の後釜にという話を文で将軍にしました。将軍も反対はしていない。よろしいですか?」
雄蔵も泰宗も雪の答えを待つ。
「……雄蔵と……、雄蔵と一緒なら構わない。雄蔵がいなきゃ私は嫌だ!」
ももたろうと泰宗が笑顔を交わす。
「そう言うと思っていました。泰宗殿は津上屋の件が片付いたら雪殿と雄蔵殿の祝言をあげる予定ですよ」
「……祝言……」
雄蔵がかちゃりと持つ長刀を落とす。
「雄蔵!」
雪が雄蔵に抱きつく。
「雄蔵!祝言だ!」
雪も雄蔵も赤く染まったことなど忘れて、はしゃぐ。
その中、ももたろうが津上屋の大旦那の首を持って歩き出す。
「ももたろうさん、行ってしまうのですか?」
泰宗の言葉にももたろうは頷く。
「暇な身ではないので。だが、雪殿と雄蔵殿の祝言には呼んでください。伺いますので」
ももたろうが去っていく。
夜は明け始めている。
「さぁ帰ろう」
泰宗の言葉が雪と雄蔵に向けられる。
二人とも頷き、朝もやの中、家臣団の待つ館へと歩き始めた。
新たな始まりを信じて。
つづく
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