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屋根から雪を抱えたまま雄蔵は飛び降りて人気のない津上屋の門の前で雪を下ろした。
「何度も言うが絶対に俺から離れるなよ。雪」
雪がこくりと頷くのを見て雄蔵は笑顔を見せて腰の長刀を抜いた。
長刀を持つ反対の手で懐から火薬を取り出す。
更に火打ち石を取り出して火薬に火をつけるなら津上屋の門の上へと投げた。
ばん!と火薬は爆発して門に火がまわる。
すぐに津上屋から人の声があがり門が開く。
「中野泰宗の手の者か!?」
刀を持った用心棒たちがぞろぞろと出てくるが雄蔵は慌てることなく、言葉もなく斬りかかる。
主だった者は中野泰宗の館に向かっているからか、それは雄蔵の鬼のような強さを知らしめるほどに斬りまくる。
返り血で赤く染まる雄蔵。一歩一歩、津上屋の奥に向かう。
「娘だ!娘を狙え!佐竹広臣の娘だ!」
敵わぬと見た津上屋の者たちは雪へと刃を向ける。
それでも雄蔵は雪を守りながら進む。
雪の身体も返り血で赤くなる。
斬っても斬っても沸いてくる敵。
雄蔵にも疲れが見えて息が切れる。
そしてついに一人斬り漏らす。
「雪!」
雪に向かってその一人が刃を向ける。
雪は襲いくる刃をじっと見つめた。
命は既に雄蔵に預けている。怖くなどない。
刃が雪へと向かって振り下ろされる。
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