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ももたろうがつい漏らす。
「いや……」
雄蔵はそう呟いて泰宗と目線を交わす。
泰宗は頷く。
雄蔵は、長刀を今立っている畳の下へと真っ直ぐに突き刺した。
「ぐわぁぁ!」
雄蔵はその場から長刀を引き抜き、泰宗が畳を素早く外す。
そこには津上屋の大旦那が肩から血を流して潜んでいた。
その手には拳銃。
「ちっ!ならば佐竹広臣の娘・雪!お前を道連れにする」
雪に向けられる銃口。
雪は目を背けない。
その直後、雪の目に映ったのは拳銃を持つ手が短剣に切り落とされた場面だった。
短剣を投げたのは雄蔵。
「雪、大旦那の首、はねるか?」
雄蔵は雪に長刀を渡そうとしたが、雪は首を振る。
「大旦那の首をはねるなら雄蔵と一緒がいい。夫婦だろ?ももたろうさん、いいですか?」
ももたろうはこくりと頷く。
「津上屋の大旦那は打ち首獄門が決まっている。将軍には私が取りなそう。やりなさい」
既に対抗する術を持たない津上屋の大旦那は命乞いを始める。
「許してくれ!佐竹広臣を殺すつもりはなかったんだ!用心棒がやったことだ!」
「……その用心棒は広臣様の命を奪うばかりじゃなく、雪の身体に一生消えない傷を負わせた。俺は許さないね」
そう言い放った雄蔵は雪の手をとって長刀を握らせる。
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