第二章・―恩返し―

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 耐える事というのは、だれもが思っているより過酷で、何より孤独にして辛い。  それでも僕は耐えられた。あのフォトグラファのように、たったそれだけで誰かの心を強く動かせる、そんな輝きを手に入れたかったからだ。    資金が続く限り色んなところへ行って、鮮やかな風景、様々な人達、個性豊かな動物達と接してきた。  そうして旅をする内に、資金が底をつきそうになり、困り果てていた時に、現地に住む人達が助けてくれた。    社会に出て、流されるまま生きていた僕が、誰かを必要として、また、誰かに必要とされる。  こんな生き方を体験出来た僕は、貴重な人生を歩んでいるのだろう。    皆が資金集めをしてくれたあの日、泣きながら頭を下げて受け取った僕を、村長は慰めてくれた。  こんなに心温まる対応をしてくれた人達のためにも、日本へと帰る前にどうしても一枚、自信を持って人前に出せる写真を撮りたかった。    それが僕なりの恩返しだと、そう思いながら大草原をファインダーにおさめていると、レンズ越しに僕自身が立っているのが見えた。
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