彼女が俺のプロポーズを100回断った理由

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 煌々と輝く街並みを一望し、シャンパンを傾きつつその全てを堪能する。眼前にそびえ立つ観覧車には、まるで流星のように光が流れている。  夜景を堪能し、口元を緩める彼女の姿は、まるでキラキラと輝いているかのようだ。  美しい。夜景より遥かに、そして何よりも尊い光景を俺は目にしているのだ。 「やはり、夜景もいいね」 「そうね。これはこれで、とても綺麗」  彼女は酒が全く飲めないので、リンゴジュースを飲んでいる。かわいい。  ここ、横浜みなとみらいは、デートスポットの中でも最上位に位置するだろう。だが断言する。今この中で一番幸せなのは、きっと俺だろうと。 「でも、夜景よりも美しいものもある。俺の目の前に」 「どうもありがとう」 「凪。僕には、君しか見えないんだ。僕には、君しかいない。結婚しよう」  クリーンヒットだ。  完璧に決まった。 「ゴメンなさい。無理よ」 「無理か」 「そうね、無理」  美しい夜景、美しい凪。  きっと、この光景を観られただけでも、失敗ではなかったのだろう。  こうしてまた、俺は失敗した。  だが後悔はない。ここに来てよかったのだ。
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