彼女が俺のプロポーズを100回断った理由

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 いつも一緒にいたのに、あの時に限って、そばに居てやれなかった。守ってやれなかったんだ。  虚無感、空虚感。何かが無くなってしまったその感覚。  ずっと後悔してたんだ。ずっと。  あれから15年経って、たまたま事業にも成功して、どんなに社会で駆け上がっても、その後悔は消えなかった。  そんな時、彼女は突然目の前に現れた。  彼女は、大人の姿をしていた凪は、双子だからかな、一目で誰だかわかった。 「もう、寂しくない? 」 「ああ、もう、大丈夫だ」 「本当に? 」 「お前とまた会えたからな」 「良かった。ずっと寂しそうだったから」 「そうか」 「私も、もう満足。もう寂しくない。もう怖くないから」 「そうか」 「ありがとう。お兄ちゃん。夢を叶えてくれて」 「ああ」 「たっぷり練習したんだから。良い人見つけて決めなさいよ」 「本当、お前のお陰だよ」 「神様にもありがとうって言わないと。願い事を叶えてくれて、ありがとうって」 「ああ本当に、本当に感謝しないと」 「こんなことに付き合ってくれて。大好きよ。お兄ちゃん。いつか、また会いましょう」 「ああ、ああ、また会おう。また」  そうして妹は、子供の頃から素敵なプロポーズを夢見ていた妹は、前がぐちゃぐちゃにしか見えていない俺の目の前から消えていった。  神社にお参りした後、俺は一人で夕焼けの帰り道を歩いていく。 「こりゃ当分、結婚するのは無理かなぁ」 「あれ? 湊さん? どうしたんですか、そんなにボロ泣きして……私で良かったら、話聞きますよ? 」  こんな所でばったりと……? 凪め、あいつさっき、一体何を願ってたんだろうか。
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