勇気

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奏、好きなヤツいる? そう書かれていた気がする。 顔が真っ赤になり、汗が額に滲んできた。 もう一度見ようとした時、チャイムが鳴った。数学担当の教師が入ってくる。奏はサッと国語のノートを机の中に隠した。 開いた数学のノートには、担当教師の似顔絵。めちゃくちゃ似ている。誇張した逆三角形の顔と大きな目とメガネ。禿げが実際より進んでいた。 面白いのに笑えない。それどころではない。先生の声が耳を素通りしていく。 一体彼はいつ書いたのだろう。 しかも『立川さん』ではなく、『奏』と。 そっと隠されたメッセージ。 何度も確認したが、やはり並んでいるのは同じ文字。 その日奏は伊月のメッセージに気づかなかったフリをして、返事を書かなかった。
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