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休み時間の間ずっと伊月の周りには人がいて、結局その日は全然話せなかった。それでも奏はご機嫌で靴を履き替え、軽い足取りで校門を出た。
鞄の中にはあのノートが入っている。
家に着く前までに我慢しきれず、途中の公園のブランコに座ってもう一度ページを開いた。
相合傘の下には奏と伊月の名前。
一生懸命に描いたのだろう。消し跡がたくさん付いた、可愛い女の子の絵。奏の顔だ。その横に真面目でくどい表情の伊月のイラスト。眉毛が本人の10倍くらい太い。すごい量の汗を流し、緊張している様子だ。吹き出しには「交換ノート、続けませんか」と書かれている。
奏はニンマリと笑った。
カバンからシャーペンを取り出し、サラサラと文字を綴る。
「続けましょう」
自ら書いた文章を小声で読み、顔を上げた。
もうすぐ夏。奏は既に強くなり始めた夕暮れの日差しを眩しそうに見つめ、今日は何を書こうと考えた。お返しには、きっと笑える「おまけ」が付いてくるのだろう。
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