伊月くんが入院した

5/5
前へ
/19ページ
次へ
奏は目を丸くした。次の瞬間思わず噴き出しそうになり、必死に堪える。数学の先生は怖いのだ。笑ったらクラス全員の前で金切り声で怒られる。 伊月の落書きが目に入らないように腕で隠しながらなんとか授業を受けるも、集中できない。時々チラチラと腕の隙間から出てくる「嘘です」に口元を緩ませながら、奏は試練を乗り越えた。 もしかして他のノートにも書いてあるのかしら。 昨日貸したノートは4冊。数学、英語、国語、社会。あとは体育と美術だったのでノートは特になかった。貸した英語ノートのページを開くと、やはりあった。 英文の横に変な外国人の絵。吹き出しには「pardon?」。 奏は慌ててノートを閉じ、それを抱えてトイレに駆け込んだ。このノートは危険すぎる。絶対に笑う。 トイレの個室の中から聞こえてくる笑い声。用を足しにきた女子生徒たちが恐怖に青ざめたことを奏は知らない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加