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恋の始まり
こんなにも「早く学校行きたい」などということが果たしてあっただろうか。
新緑が濃い色に変わり、強くなってきた日差しを遮る通学路。ご機嫌で歩く足は次第に力強く、早足になっていた。
昨日奏は、落書きのひとつひとつの端に一言ずつコメントを書いておいた。そして骨折の理由の所には「本当はどうして?」と質問を書いた。数学は昨日もあったので、伊月にノートを渡すことができた。
他の授業のノートも普段より丁寧に取り、見やすく要点にマーカーで色を付けた。誰かに見せるとなると真剣味が増した。
ホームルームが終わって担任からノートを受け取る。一時間目は理科。まだ少し時間がある。奏は数学のノートだけ持ってトイレに行った。
ワクワクしながらページを開くと、寝転んだ猫(不細工)のイラスト。吹き出しには「俺が踏んでやったんだよ。踏まれたお返しにな」と書かれていた。そしてお約束のような矢印。
次のページには探偵ものアニメの主人公の絵。これは結構上手に描けている。セリフは「真実は多分ひとつ」。
その日は数学がなかったので、この件に関しては保留だ。
他のノートにはやはりたくさんの笑いの罠が仕掛けられていた。
奏の生活に明るい色が差す。仲の良かったヨッちゃんは引っ越し、みよりんもクラスが分かれてしまった。新学期に風邪をひいて休んでいる間にグループが出来上がり、どこにも入れないで二ヶ月経っていたのだ。
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