恋の始まり

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それから奏と伊月はまるで交換ノートをするかのように、文字でたくさん会話をした。 ノート分かりやすい! なんか最近、勉強が楽しくなってきた。立川さんのおかげかも。 俺、確実に成績上がってる! そんなコメントが嬉しかった。 ある時など、奏は数学の練習問題をほぼ間違えた。恥ずかしかったが、ノートを渡さざるを得ない。それが翌日に返ってきた時には、伊月から赤で「ここじゃね?」と途中の計算式の間違いに印が付けてあった。 どこで引っ掛かっているのか一目瞭然だった。 ーーありがとう。いっぱい間違えちゃって恥ずかしい。 ーーダイジョブ、ダイジョブ! お陰で俺も解き方がよく分かったからグッジョブ! 褒めてつかわそう! 返事を見るといつも顔がにやけた。同時に胸の奥がキュッと絞られるよう。 毎週末何人かが見舞いに行っていたが、奏は行かなかった。すると週明けのノートに「立川さんが見舞いに来てくれない。ブー」と涙するブタの絵が。 伊月の志望校は奏の成績では少し努力がいるところだ、と知った。 奏は進路相談の時に、担任にその高校を目指していることを伝えた。彼に伝えるのは恥ずかしくて、ノートには第二志望の女子高の名前を書いた。
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