朝の哀しみ

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朝の哀しみ

 いつものようにチャイム。  ドアを開けたら、いつも通り、遠野さんのりりしい顔。すぐ家を出てドアに鍵。  遠野さんったら首かしげてる。  「おばあちゃん。もう出たの?」  「昨日から出張です。一週間帰りません」  「そう・・・」  遠野さん、別に関心ないって表情。僕の前に立って歩き出す。  あわてて後追いかけ、少し斜め後ろの位置をキープ。  「遠野さん。僕、祖母が帰ったら・・・」  遠野さんったら前向いたまんま。いつもより歩くのが遅い。  以前は信号交差点の手前で右に曲がって会社に向ってた。  いまはもう少し先まで一緒に歩く。その関係で、歩幅を大きく、ちょっとだけ速足で歩くんだけど・・・  「僕らのこと、ちゃんと話します。」  思い切って大声で言ったのに・・・  「勝手にしたら」  遠野さんったらつれない返事。  僕、どうリアクションしたらいいんでしょう・・・    「君にそんな勇気があるなんて、信じないけど・・・」  僕の方なんか見てくれない。  なんでそんなこと言うんだろう。    「ちゃんと話します」  僕、もう一度、大声で言う。  「わたしに?」  前向いたまんま。  そのまま信号を通り過ぎた。     
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