早朝の悪夢

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 僕、顏真っ赤です。  別の意味で真っ赤な人・・・僕の隣にいるんです。  「いつ来るんだ?」  地方の教育委員会の幹部をしている大叔父。祖母の弟。  「ところでその女性(ひと)はどなただろう?」  小学校の校長先生をしている親戚の石田さん。  「僕も覚えないな。母親の恵子の友だちだろう」  「恵子の同級生かなにかか?それとも先輩?」  「文江の代理か?」  「洋介の母親代わりというわけか」    隣に立つ遠野さん。のどをゴクンって鳴らした。  こわい顔。  ブルブル震えてるのよく分かる。  まちがいない。  怒ってる。  「遅くなってすまん」  待合に聞き覚えのある声。大伯父の高崎一郎。大学の名誉教授。  ロビーにいるほかのお客さんの間でざわめき。  ひそひそ話が聞こえる。  「講演が長引いてな」  「わたしにも回してよ。いいアルバイトになるんだし・・・」  助教授をしている伯母の緑川さん。  「おいおい。今日の主役は洋介だ。  つまらない話を回すな。  高校三年で婚約とは少し早い気もするが・・・」  「俺は賛成できんな」  進学塾のカリスマ講師。母の弟の光二叔父さん。  「教育者の家にふさわしいとは思えないな。だいたい、母さん、甘かったんじゃないの?  だいたい姉さんにも甘かったな。  俺には、厳しかったのに・・・  相手は高校の同級生ってところか。  おとなしいと思ってたが、うちの学校なら許されることじゃないな」  光二叔父さんの目って冷たい。     
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