14人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
朝の哀しみ
いつものようにチャイム。
ドアを開けたら、いつも通り、遠野さんのりりしい顔。すぐ家を出てドアに鍵。
遠野さんったら首かしげてる。
「おばあちゃん。もう出たの?」
「昨日から出張です。一週間帰りません」
「そう・・・」
遠野さん、別に関心ないって表情。僕の前に立って歩き出す。
あわてて後追いかけ、少し斜め後ろの位置をキープ。
「遠野さん。僕、祖母が帰ったら・・・」
遠野さんったら前向いたまんま。いつもより歩くのが遅い。
以前は信号交差点の手前で右に曲がって会社に向ってた。
いまはもう少し先まで一緒に歩く。その関係で、歩幅を大きく、ちょっとだけ速足で歩くんだけど・・・
「僕らのこと、ちゃんと話します。」
思い切って大声で言ったのに・・・
「勝手にしたら」
遠野さんったらつれない返事。
僕、どうリアクションしたらいいんでしょう・・・
「君にそんな勇気があるなんて、信じないけど・・・」
僕の方なんか見てくれない。
なんでそんなこと言うんだろう。
「ちゃんと話します」
僕、もう一度、大声で言う。
「わたしに?」
前向いたまんま。
そのまま信号を通り過ぎた。
最初のコメントを投稿しよう!