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彼女の涙は、空気に触れると美しい花弁へと姿を変える。
それは決まって、赤くひらひらとしたホウセンカの花だった。
彩雨から流れる涙はいつだってそうだ。
しかしその度、気味が悪いだの、気持ち悪いから近づくなと色んなことを言われた。
でも幼い頃から言われてきた彩雨はそこまで気にしていなかった。
美しい花たちは陰口も言わなけば、顔色を伺いながら無理に合わせることも必要ない。むしろ彩雨の心を癒してくれる。
友達という友達がいなくても特に不自由はなかった。
だが。
ある日彩雨の前に現れたのは綺麗な転校生だった。
転校生はすぐにクラスの人気者になった。明るく笑う転校生に誰もが虜になって、彩雨も初めて花以外のものを美しいと思った。でもそれと同時に、アヤメは転校生を儚い蝶々のようだと思った。笑顔の裏に自分と同じものを抱えているような、そんな気がした。
そのうち彩雨は転校生とよく話すようになった。
きっかけは、とても些細なことだった。
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