蝶々とひとひらの雫

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転校生は彩雨の育てた花を見て、とっても綺麗だね。と笑った。 転校生からしたら、何の気なしにこぼれた言葉だったのかもしれない。でも、彩雨にとっては涙が出るほど嬉しい言葉だった。 ほろほろと、彩雨の瞳から落ちたのは白くて大きな花びら。トラユリという花だ。 「これ……ユリかなぁ。」 転校生はおもむろに花びらを手に取るとじっと見つめ、それを口に含んだ。 「え……。」 「ふふっ。凄く甘い……。」 紫色の瞳を細め、赤い唇の端を上げて笑う転校生は艶やかで、この世のものとは思えないほど綺麗だった。 それから彩雨は転校生と行動を共にするようになった。世界に色が付いたように、彩雨は楽しくて仕方がなかった。
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