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「あ、お兄ちゃん、バレンタインのチョコいっぱいもらったの?」
「ああ、だめだよ」
「いいじゃない、こんなにたくさんあるんだし、1つぐらい」
妹は山のように積まれた茶色のハート型の1つを取り、かぶりつく。
「いてっ、何これ、かめない」
「だから言ったろ。だめだって。これはチョコレートじゃないんだよ。3Dプリンターで作った模型なんだよ」
「え、何よそれ」
「第一、本物のチョコレートだったら、箱か銀紙に入れとくだろ」
「あっそうね。テヘッ」
妹は恥ずかしそうに舌を出した。
「だけどどうしてこんなにたくさん作ったの?」
「うん、今度、学校で演劇をやることになって、3Dプリンター持ってるのぼくだけだから小道具を作ってくれと頼まれてたんだ」
「そうなの。だけど行事が終わったらこれらどうするの?」
「うーん、捨てるかな」
「あー何かもったいな~い。本物のチョコだったら食べて処分できるんだけど。産業廃棄物ね」
少しして、妹がまたしゃべり出す。
「あっそうそう、この前テレビで見たんだけど、食材を材料にして3Dプリンターで料理作ってた。そのうち本物のハート型のチョコレートもできるんじゃないかしら。それで、3Dプリンターが普及したら、送りたい人にネットで送って、配達の手間も省けるんじゃないかな」
「うーん、それはどうかな」
「え?」
「あー、チョコレートの材料を捨ててる。送ってきてくれる女の子が予想より少なかったから、って何よそれ」
兄と妹は一緒にテレビを見ている。
「私が子供のときは3Dプリンターが珍しくて、ハートを本物のチョコと間違えてかんじゃったりしたけど。今はハート型のチョコレートも送れるようになったけど、材料を用意するにも加減がいるんだね」
「まあそうだね」
「そうかあ。材料を配達してきてくれる人達も相変わらず忙しいんだね」
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