とけねこと私

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ワイドショーの合間、テレビショッピングを何の気なしに見ていたときのことだ。 大袈裟な物言いの司会者が紹介していたのは、動物の気持ちを完全に代弁してくれる機械、とのことだった。 (大昔にもあったな、犬とか猫限定だったけど。) 確かバラエティーの企画で笑いものにされていた。ものすごい発明品、という印象はない。時代が移り、技術の進歩が目覚しいとはいえ、どれほどのものだか。 胡乱な眼差しをテレビの右脇からマナティにうつす。窓の天板部分に座っている彼女は、今日も熱心に外を見つめている。 「マナティ」 呼びかけると、しっぽでたしん、と床を叩いて返事をするが、視線は外を向いたまま。 1年前からずっとあの調子だ。 暇さえあればああして外を見て、時折私の元に何か訴えに来る。 今日は何か言いたい気分だったらしい。 マナティが駆け寄ってきて私の膝に飛び乗る。 「なー、うなーん、にゃ」 興奮気味にうにゃうにゃ言っていたかと思うと、また窓辺に戻って外を眺め始めた。 これは恐らく、私への苦情だ。 (確かめる手立てが、もしあるとするなら) スマートフォンを手に取り、テレビを見ながらキーパッドを押す。 「もしもし、今テレビでやってるーー」 商品は、注文した翌日に届いた。     
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