とけねこと私

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アニマリンガルの説明書を引っ張り出して読むと、次のことが書いてあった。 効果が出るには1時間以上継続的に音を聞かせてください。本品のスイッチを切って30分程で効果は切れます。また、本品の過剰使用は動物の体に影響を及ぼす場合がありますため、一生涯に一度までのご使用でお願いします。 「え、30分?」 手近なスマートフォンを手繰り寄せ、時計を確認する。 さっきアニマリンガルを切ってきっかり20分。あと10分しかない。 こんなやり方で聞くのは間違っているけれど、あと10分だけ許して欲しい。 ずっとずっと聞きたかったことがあるのだ。 ふっとマナティを振り返ると、にぼしを食べ終わって手を舐めている。 もう半分以上元に戻った手の先、まだ残っている琥珀色の部分に触れた。 「ねえマナティ。やっぱり、お姉ちゃんが」 お姉ちゃん、の単語に反応して、彼女の耳がぴん!と立った。 (おねえちゃん!おねえちゃん、帰ってきたの?) かつて私の姉はマナティに話しかけるとき、自分のことをおねえちゃん、と呼んで話しかけていた。 それを覚えていたらしく、おねえちゃん、の言葉に反応するマナティがいじらしい。しっぽもぴんと立ち、期待の眼差しでこちらを見ている。 姉が結婚し、日本を発ったのはちょうど1年前のことだ。     
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