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とけねこと私
朝起きると、猫が半分溶けていた。
「…え?ええ?」
廊下に立ち尽くす愛猫のマナティは、胴の半分から下が琥珀色のスライム状になっていた。手足の形は保ってはいるが、とろん、ととけたように薄く透き通り、中の液が流動しているのが見て取れる。
茶トラの色と似たそれは、変わり目がきれいなグラデーションになっており、妙に自然に接着していた。
「にゃあ」
「ま、マナティ、大丈夫?歩けるの?痛くないの?」
にーにー、と元気に鳴きながらこちらを見上げるマナティは、普段と変わらず元気そうだ。
不思議と気味が悪いとは思えず、そうっととろけた部分に触れる。
「あっ」
生き物の温度のそれは、掴むことは出来ない。代わりに私の腕を飲み込み、包み込み、果ては体内に流れ込んできた。
(しほ、にぼし)
「にぼし?」
指に触れる暖かなゼリーの流れが、言葉となって伝わってくる。まるで文字を触って理解しているかのような不思議な感覚だ。
私と彼女の体が溶け合い、ひとつになるような。
ことは三日前に遡る。
「はい!本日ご紹介するのはコチラ!最新鋭の技術によりついに完成いたしました。その名も『アニマリンガル』」
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